2017年02月06日

2017.2.6熊本県立大学総合管理学部准教授 澤田道夫氏講演会「地域・大学・行政の連携-その意義と可能性-」

今日は、熊本市都市政策研究所第17回講演会に行ってきました。
「地域・大学・行政の連携-その意義と可能性-」と題し、熊本県立大学総合管理学部 澤田道夫准教授が講演されました。

1 イントロダクション
〈自己紹介〉
専門分野:行政学(自治行政)、参加協働論

〈職歴〉
石油公団(1993~)石油会社に融資
熊本県庁(1996~)熊本で子育てをと思い移住
熊本県立大学(2010~)

〈学問の3分野〉
自然科学:普遍的・共通的、他都市でも通用 ex.IPS細胞
社会科学:行政学や参加協働論など、社会の仕組み
人文科学:文学、歴史、心理学など人とは何か?すべての学問の土台

〈熊本の高等教育資源〉
熊本市は大学・専門学校など多くの候と教育機関が立地
人口比学生数は20政令市の中で大都市に伍して6位
熊本は学生のまち「学都」

2 地域社会の変化
〈地域が抱える課題〉
・人口減少…現役世代の負担が増える
・少子高齢化…少子化と高齢化はそもそも別問題
・多様化…他文化との共生、さまざまな価値観

〈行政側の変化〉
・地方分権の推進
 地方分権により地方公共団体の業務量が増加
 1990年代以降大きく地方のあり方が変わる
 2000年地方分権一括法
 地方分権自体はいいこと。
 本来であれば仕事も権限も財源も分権されなければならないが、仕事だけが分権されている。
 地方自治体は権限も財源もなくものすごい量の仕事をしないといけないというのが現実。

・厳しい財政状況
 1990年~経済(景気)対策
 バブル崩壊後の地域経済は上を向くことはなく借金だけが増えた(失われた20年)
 お金もない、人も増やせない

・「あれもこれも」から「あれかこれか」へ 
 昔はあれもこれもできていた。
(交流人口を増やすために温泉センターを作る、など)
「あれもこれも」から「あれかこれか」へ

〈住民側の変化〉
・社会の成熟化
 土曜日が休みとなり余暇時間は増加
 仕事から離れて何をしようか、と考えることができる
 生涯学習があたりまえ、以前のように精一杯働いて余生はのんびりという世の中ではない
 ex.公開講座の受講や大学への入学、自分磨き、CPD
 高齢化自体はさほど問題ではない、医学や化学の進歩が目指してきた方向である
 定年退職後、仕事を終えて地域に帰ってくる→地域に専門的な知識を持つ「人材」がどんどん増えていると言える
 人材が地域に帰ってくることにより行政の果たせる役割が以前より相対的に小さくなっている

〈協働とはなにか〉
・協働のまちづくり→行政と地域の各主体(住民・自治会・NPO・企業等)が力を合わせてより良い地域をつくりあげていく
・今や「協働」は、全国の自治体政策における中心的理念の一つとなっている(行政学者:荒木昭次郎が日本で初めて協働の考え方を提唱)
 行政よりも民間がしたほうがよっぽどうまくいくことが多い
 「行政はここまでしかできませんが、どうしましょうか」と言える関係作りが大切

3 大学との連携
〈大学の持つ3つの資源〉→地域に出かけて地域の課題を考えるときに以下の3者が補完しあうものである
・教育
・研究
・地域貢献

〈行政と大学との連携〉←いかにして大学と連携していけるか?
・専門的知識
 行政の審議会に学識経験者として参加
 研究に没頭しているとどうしても世間の動きに疎くなってしまうため、大学の先生にとってもメリット有
・共同研究
 行政が持っている地域課題を一緒に研究

〈地域と大学との連携〉
・地域貢献
 コミュニティの活性化に関する研究を大学で行ったところ、地元住民のやる気がアップ&学生も新たな気づきが得られた
 積極的に行ったほうが良い
・ボランティア
 大学生には若さ・力があるが、それを活かす場所がなかなか見つけられない
 大学生がボランティアをすることで、地域だけにメリットがあるわけではない、大学生にとっても望ましい

4 大学との連携-研究面-
・消滅可能性自治体(増田レポート)
 =2040年までに若年女性が50%以上減少する自治体、当時は衝撃的に受け止められた
・半減するのを食い止めるのはムリだと希望を失う必要はない
 マイナス50%のうちの40%分は自治体の責任ではない
 なぜなら、2040年に20~30歳になる女性の数はもう決まっている(現在0~10歳の女性)
 残りの10%を減らさないように戦略を練ればいい
 こういった学術的な視点を持てれば戦うべき10%がわかるので大学との連携は重要である

〈中山間地域振興〉
・中山間地域における集落消滅の危機
 闇雲に「地域を元気にしていこう」ではダメ
・どうやって人口を維持していけばいいのか?
 ここでも学術的な視点が必要
・移住1%戦略
 →集落の人口の1%が移住してくれば人口は維持できる(藤山浩・島根県中山間地域研究センター)
 700人の集落なら7人移住してくればよい
 具体的な目安や数値目標がわかれば政策が創れる
 田園回帰1%戦略を参照

〈研究機関連携〉
・自治体の研究機関と大学との連携
 熊本県立大学×熊本県農業研究センターでは、ただ農業をするだけではなく経営的・科学的な視点を提供
 熊本県立大学×都市政策研究所では、研究の幅が広がっている

5 大学との連携-まちづくり-
〈コミュニティ活性化〉
・地域コミュニティ活性化プロジェクト
 自治会と学生のつながりは薄く、自治会にとっては学生はゴミ出しルールを守らない迷惑住人
 両者をいかにしてつなげることができるのか…そこで、大学生と自治会の活動をつなぐための方策を学生が検討
 地域の夏祭りに学生に加わってもらうと地域の人々が元気になり、今年はこんなことをやってみようなどのアイデアが出てくる
 まさにActive learningとなる
 学生に手引書を作らせたが熊本地震の影響でまだ印刷はしていない
 ゆくゆくは大学生が後で使えるものにしたいと考えている

〈里山再生〉
・「なごみの里」里地里山再生
 以前は里山はいろんなものを供給してくれる地域資源だった
 大学生と地域住民が一体となって、荒れ地となってしまった里山再生活動を実施、10年近く続いている
 今では小屋を建てて農機具を収納、餅つきなど行っている
 大学生や研究機関がやってくると地元住民が頑張る

〈研究+まちづくり〉
・天草夕陽八景
 天草市西海岸地域がフィールド
 地域資源の一つである「夕陽」を活用した地域振興のあり方を研究
 →自分の地域の魅力を考えるワークショップ、現地確認、絵画など

〈地域・大学・行政の連携〉
学都であることは熊本市の大きな地域資源である
恵まれた地域資源をどのように活かしていくか
大学も学生の教育先・研究先を探しているが連携先が見つかるかわからない
行政も地域も積極的に大学との連携を!


6 大学との連携の新たな可能性

この講演は5月に行うはずだった
熊本では…熊本地震が発生
以下は熊本地震をうけて追加したもの

〈大学生の活躍〉
・熊本市災害ボランティアセンター
 平成28年4月22日設置
 ボランティア受け入れ総数38,000名
 ピーク時一日受け入れ数1,301名
 ピーク時運営スタッフ数200名程度

・通常は「大人」がボランティアセンターを運営
 だが…

・「熊本方式」
 設置当初から大学生を中心に運営
 →200人の大人をかき集めると益城や西原などの周辺自治体に人が回らなくなるため
 設置~GW期間 スタッフの8割が学生
 →大学生が、自分たちはどう動けばいいか考えている
          自分たちで教えあっている
  翌日の人数が足りなそうであればLINEなどで連絡を取り合い人を集める

 このようなボランティアセンターの運営方式は全国初である
 県外から来た人が
 「災害という大変な事態ではあるが、若い人がワイワイとにぎやかに活動している熊本市のボランティアセンターは楽しそうだ」
 と感想を述べていた
 熊本地震をきっかけとして、大人が思うよりも大学生は頼りになることがわかった
 若者が主体的にやるべきことを考え、にぎやかに震災復興に向けて進んでいく、そんな姿に熊本市の明るい未来を見た

2017.2.6熊本県立大学総合管理学部准教授 澤田道夫氏講演会「地域・大学・行政の連携-その意義と可能性-」










Posted by まんまるゆきりん at 22:19│Comments(0)
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